兵庫プロメイン相続サポートセンターブログ
STAFF BLOG
成年後見制度と家族信託について
2016.03.31
皆さん、こんにちは!主任講師の洲﨑です。
いよいよ明日から4月です。入学式や入社式など新しいスタートの季節です。
兵庫プロメイン相続サポートセンターでも4月から毎月相続対策セミナーを開講致します。
皆様のご参加お待ちしております。
さて、前回の相続ブログでは、遺言と家族信託について記載させていただきました。今回は成年後見制度と家族信託について見ていきたいと思います。
【成年後見制度と家族信託について】
成年後見制度の概要については2016年2月18日付のブログをご参照くださいませ。
この成年後見制度も素晴らしい制度ではありますが、成年後見制度の目的は本人の財産保存であるため、家庭裁判所によって選任された成年後見人等の本人を支援する人は、あくまで本人のためにしか財産を使うことができないという制約もあります。この点は任意後見契約を締結した場合でも基本的には同様です。
そのため、例えば株などの運用や相続税の節税対策、納税対策としての不動産の処分等は成年後見制度ではなかなか難しいというのが実情です。
この点、家族信託であれば本人が元気なうちに、例えば本人を委託者兼受益者(自益信託)、長男を受託者として、信託契約を締結すると、今後の財産管理は長男が行うことになります。ここまでであれば、任意後見契約でも構造は似ていますが、信託契約の場合は、さらに資産をリスクの伴う高利回り商品で運用するとか、相続税の節税・納税対策として不動産の処分、リフォーム、賃貸住宅の建築等なども信託契約に明記すれば、受託者の責任と判断において行うことが可能となります。
そして、将来本人の意思能力に問題が生じた場合でも成年後見人等を付ける必要もなく、長男が信託財産の中から本人の生活費や介護費等を支払うことができます。さらに本人が死亡しても信託が終了しない契約とすれば、名義変更等の相続手続を省略することができ、引き続き受託者が財産管理を行うことができます。(成年後見制度では本人の判断能力が減退する前であれば効力がなく、後見人は本人の死亡後の管理・承継までは行うことができない点が異なります)
このように家族信託であれば、判断能力が衰える前に対策をしておけば、相続発生後の財産管理も可能となります。
このように書くと成年後見制度よりも家族信託の方が優れているような印象を持たれるかもしれませんが、受託者には生活・療養看護(いわゆる身上監護権)を有していない点には注意して下さい。
すなわち、受益者が認知症になり施設へ入所したり、病気等で入院することになった場合にその費用の支払いは出来ても、入所契約や入院契約手続を行うことはできません。信託はあくまで受託者が受託者名義で財産の管理・処分等の必要な行為を行うものです。
成年後見制度であれば、財産管理に加えて生活、療養看護義務も規定していますので(民法第858条、任意後見契約に関する法律第2条第1号参照)、後見人等が本人の代理人として(本人の名前で)かかる契約を行うことができます。そのため、施設入所契約や入院契約などが必要な場合には、家族信託契約と併せて成年後見人の選任手続きや任意後見契約の締結を検討するべきでしょう。
このように家族信託と成年後見制度を併用することで、受託者と成年後見人が財産管理と身上監護とを役割分担することができます。
(後見人と受託者について同一人が兼任することができるかについては、後見人は本人の身上監護や財産管理の代理人であり、受託者と利益相反関係に立つことが想定されます。したがって、原則として後見人と受託者は兼任することはできないものと考えられます。
また、法定の成年後見制度と任意後見契約が競合する場合は、本人の意思を尊重する観点から、本人の利益のため特に必要であると認められる場合を除き、任意後見契約が優先します(任意後見契約に関する法律第10条第1項参照))。
前回の遺言との関係に引き続き、今回記載させていただいた内容も、信託の基本的な枠組みだけですが、信託を学べば学ぶ程に奥が深い制度であると感じます。民法の考え方では到底実現できない法律構成も可能となる等、信託の本質に反しない限り当事者の望むいかなるスキームでも設計できてしまうところに、大きな魅力を感じる反面、信託を利用する個々人の倫理観が問われることになるように思います。信託は遺言や成年後見制度を補完し代替する機能も有しているところ、間違ってもそれらの制度を蔑ろにするような信託や脱法信託(信託法第9条)、訴訟信託(信託法第10条)、詐害信託(信託法第11条、12条)などは絶対にすべきではありません。
信託を必要としている方が有効に活用できるように、家族信託を正しく理解し、信託制度を発展させていく努力をすることも我々相続サポートセンターの責務であると考えております。
最後までお読みいただき有難うございました☆
次回からもよろしくお願いします!!
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