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認知症になると…

2016.02.18

皆さん、こんにちは!主任講師の洲崎です。

相変わらず寒い日が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?

 

前回のブログでは、相続対策はなるべく早めに行いましょうということをお話し致しました。今日は認知症になってしまった場合について少し考えてみたいと思います。

 

 

【新オレンジプラン】

皆さんは「新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)」をご存知でしょうか。

認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし

続けることができる社会の実現を目指すという政府の新しい戦略です。

 

団塊世代が75歳を迎える2025年に、認知症患者が高齢者の5人に1人、約700万人にも上るという推計が出されています。さらに厚労省の発表では、実は2012年の時点で認知症予備軍も含めると800万人以上に達するとされております。

そのため認知症の方が認知症とともにより良く生きていくことができる環境を整備すべく策定されたのがこの新オレンジプランです。詳しくは厚労省HPをご覧くださいませ。

 

 

私の親も団塊の世代にあたりますが、

もし自分の親が認知症になってしまったらどうしよう・・・

 

個人的な感情はさておき、財産の管理・処分は間違いなく困難になります。

 

 

【銀行預金】

例えば、銀行預金にしても本人の意思確認ができないと原則として、銀行は預金の引出しや送金、解約を認めてくれません。成年後見制度を利用するべきでしょう。

この成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度があり、法定後見制度は本人の判断能力の程度やその他の事情によって「後見」「保佐」「補助」の3つに分けられます。

この法定後見制度は、既に判断能力がない(または衰えた)人を、どのように援助するかという制度であり、判断能力が不十分となった人たちの人権や利益を守るために用意されたものです。そのため、家庭裁判所によって選任された本人を支援する人(成年後見人・保佐人・補助人)は、本人の介護費や入院費等、本人のために使う場合にのみ預金の使用が認められます。

もう少し、柔軟な運用を望まれるのであれば、任意後見契約が良いと思います。これは、今は元気だけど、将来、判断能力が低下した時に備えて今のうちに、誰にどのような内容の支援をしてもらうかを予め契約で決めておくというものです。任意後見人に援助してもらう内容を予め契約で定めているため、任意後見人はこの契約で定めた委任事務を行うことが可能です。そのため、法定後見の場合と比較すると、任意後見は自分で、支援者と委任事務の内容を決定できる点において、より自分らしく生きることが可能な制度といえるでしょう。

(意思能力さえあれば、「補助」や「保佐」の対象となる方でも、任意後見契約を締結することは可能です)。

契約内容は基本的には自由ですが、制度の趣旨に従ったものであることが必要となります。任意後見契約に関する法律2条1号から、任意後見人の職務は本人の「生活・療養看護」と「財産の管理」に関する事務に限られ、これら以外の代理権の付与は認め難いと考えられます(行為能力を制限された人が法律行為を行うことを可能にするためのものなので、療養看護といっても、事実行為としての介護ではなく、介護契約や施設への入所契約等の療養看護に関する法律行為である点に注意が必要です。また、財産の管理は、安全確実であることを要するので、株式投資などの投機的な運用はできません。さらに財産を本人の配偶者や子に贈与・貸付を行うことも原則としてできません。)

そして、現実に本人の判断能力が不十分となった時に家庭裁判所により選任された任意後見監督人による監督の下で任意後見人の仕事は開始されます。

 

 

【不動産】

親名義の土地を売却処分する場合も、本人の意思確認ができないようでは、司法書士も登記を受諾してくれません。この場合も成年後見制度を利用する他ないでしょう。

法定後見の場合、居住用財産の処分は家庭裁判所の許可が必要になり、その許可は本人の財産を守るという観点からの合理的な理由が必要になります(民法第859条の3参照)。許可を得ずになされた処分行為は無効と解されています。

他方、任意後見の場合は家庭裁判所の許可は不要ですが、合理的な理由は必要です。

 

 

【遺言】

他にも、認知症であれば症状の程度にもよりますが、意思能力との関係で、遺言書の作成も困難となります。

成年後見制度を利用しても、成年後見人が本人を代理して遺言をなすことなどできません。

この点、公正証書遺言であれば公証人が作成に関与することになるので無効にはならないとお考えになられる方もいらっしゃいますが、意思能力の有無が問題になった場合、公正証書遺言でも無効になる場合はあります(現に効力が否定された裁判例もあります)。

とはいっても、公証人も後で無効となるような遺言を作成することはできませんので(公証人法第26条参照)遺言者の客観的な状況をしっかり観察、判断して作成してくれます。その際に意思能力の有無も通常は明らかになるはずです。

それに、公証役場という公の機関で認証された遺言書なので信頼性も高いものがあります。

それゆえ、公正証書遺言が一番おススメです。

ただし、判断能力が十分あるうちに作成してください。

 

 

【その他の問題】

さらに、少し話が変わりますが、

最近、問題となっているのが認知症患者の徘徊によって事故が起きた場合や何らかの事件を引き起こしてしまった場合の責任の帰趨です。認知症により、本人が責任無能力者と判断された場合、本人を監督する義務のある者は、監督義務を怠っていない場合でない限り損害賠償責任を代わって負担することになります(民法714条)。

2007年に認知症患者の男性が徘徊中に電車にはねられ死亡し、JR側が遺族に損害賠償を求めて提訴した事件の最高裁判決が来月1日に言い渡される予定です。争点は遺族の責任の有無であるところ、認知症患者に対する家族の監督責任について初めての判断を下す見通しとなっています。私も注目しています。

 

このように認知症については考えておくべき事柄が多岐にわたります。

後から無用なトラブルを防止するためにも元気な今のうちから遺言書を作成する、任意後見契約を締結する、家族信託を検討する…など何らかの対策を講じておくべきでしょう。

少し記載が長くなってきましたので、

今回は認知症に孕む主たる問題点のご紹介にとどめたいと思います。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。次回以降もよろしくお願いします。

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