はじめに
みなさまの中には両親等から不動産を相続し、相続税を支払った経験がある方もいるのではないでしょうか。
実は、取得した実家や賃貸不動産等を売却する際に、過去に支払った相続税の一部が経費として活用できる特例があるのをご存じでしょうか。
この特例を活用するには期限が決まっており、知らないうちに期限を過ぎて損をしてしまう可能性もあります。今回は、改めて特例の概要について解説したいと思います。
相続税の取得費加算の特例
相続税の取得費加算の特例とは、相続または遺贈により取得した土地、建物、株式などの財産を、一定期間内に譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができる特例です。それにより経費を多く計上でき、結果、売却後の手残りが多くなります。
特例の適用を受けるための要件
◆相続や遺贈により財産を取得した者であること
◆その財産を取得した人に相続税が課税されていること
◆その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡してい ること
【参考】
国税庁No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm
この中で特に注意すべき点は(3)にある譲渡の期限です。
相続税の申告期限は通常、相続開始の翌日から10か月以内となっています。
したがって、相続開始から3年10か月以内に譲渡する必要があります。
例えば、みなさまが不動産会社に売却を依頼した際に、過去の相続税の申告書まで確認する方は多くないのではないでしょうか。
また、売却を担当する不動産会社の営業担当も、顧客の過去の相続税の支払まで確認することは基本的に無いと思います。そもそも特例の存在を知らなければ確定申告の際に、申告が漏れてしまう可能性もあります。長期譲渡所得の場合、税金は20.315%(所得税:15.315% 住民税:5%)であるため、その分手残りが大きく変わることになります。
ちなみに長期譲渡所得とは、譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年を超える土地建物を譲渡した場合の所得になります。
相続で取得した不動産の場合、被相続人である両親等が所有していた期間を引き継ぐため、長期譲渡所得に該当するケースが多くなります。「親から相続してまだ2年だから、税金が高くなる短期譲渡所得では」と勘違いをしている方もおられるので、こちらも注意が必要です。
最近、お客様との面談で「この土地は、いずれもっと値上がりするはずだから、今は売らない」という方がおられました。
取得費加算の特例により安くなる譲渡所得税分に加え、今後の固定資産税の支払いといった経費、それと今後の値上がり益を天秤にかけて判断されているようでした。
ただし、不動産という資産は、所有しているだけでは固定資産税等の維持費は必ずかかります。活用しなければ、場合によっては負動産になりかねません。
不動産については、維持していくのか場合によっては手放すのかを慎重に考えていく必要があります。
おわりに
昨今、地域によっては土地の路線価格が毎年上昇しているエリアがあります。
相続した不動産をいずれ売却する予定の方は、売却価格の把握とともに、まずは特例が使える期限を把握しておくと良いでしょう。
土地が今後値上がりするか、値下がりするかどうかの判断は簡単ではありません。現時点での売却価格を把握することで今後の相続対策の検討にも役立ちます。
当社では、不動産の売却査定に加え、取得費加算の特例を適用した際にどれだけ税金が安くなるか等、不動産税制や相続税に詳しい提携税理士と連携してシミュレーションも可能です。いつでもお気軽にご相談ください。