安倍晋三元首相が非業の死を遂げられてから3年が経過しようとしています。相続税の税務調査というのは、一般的に申告期限(亡くなってから10ヶ月)から2年以内に来ることが多いです。安倍元首相の相続税の税務調査が行われるとすれば、既に終わっているかもしれません。修正申告の額が多額でなければ、マスコミのニュースに取り上げられることもないかもしれません。
しかしながら、個人的には税務調査はなかったのではないかと思っております。
なぜならば、事件や事故、自殺など遺族の悲しみが深い相続については、税務調査の対象となりにくい傾向があると感じるからです。あくまで、私自身が相続税の申告に携わってきた経験に基づく個人的な感想になりますが。年間多数の相続税の申告をするような大手税理士法人さんできちんと統計を取ってみないと確実とは言えません。
ただ、少し考えてみていただきたいのですが、あなたがもし税務調査官だったとして、失意の中にあるご遺族に対し「ご主人の財産についてお聞きしたいことが…」という話はなかなか容易ではないでしょう。それが仕事とはいえ、私だったらどんなにお金をもらっても嫌です。
もちろん、多額の脱税が疑われたり、総資産額が管轄の税務署の中で抜きんでていたりすれば死因に関わらず調査が行われるでしょう。
なぜ税務署が死因を把握できるのかについては少し説明が必要かもしれません。死因は、死亡診断書、もしくは被相続人の経歴書に記載されます。どちらの書類も相続税申告書への添付義務はないので、提出しなくても問題はありません。しかし、提出した方が税務調査の可能性が低くなる傾向があると感じていますし、特に死因が事件や事故などであった場合には、提出することで状況が考慮されやすくなる場合があるかもしれません。
税理士の立場からすると、特殊なご事情でお亡くなりになった場合、相続税の申告準備において、ご遺族の状況に配慮した柔軟な対応が求められることがあります。例えば、必ずしも全ての詳細な資料収集を杓子定規に求めるのではなく、状況に応じて対応を検討できる余地が生まれることもあります。これにより、結果的にご相続人様の負担が軽減されるケースも考えられます。また、税理士が申告内容の正当性を保証する「書面添付制度」(税理士法第33条の2に基づくもので、申告書の内容が真正であることを税理士が確認した旨を記載した書面を添付する制度)を活用することも、このような場合には特に有効かもしれません。
参考までに、私の経験した範囲内での死因と税務調査の関係を書いておきます。
自殺と交通事故では税務調査はありませんでした。殺人事件は未経験です。アルコールやヒートショックなど自宅での突然死は税務調査が行われました。
税務調査は複数の要因で行われるので、参考程度としてご承知おきください。