遺言書の作成や遺産分割協議を行う際、財産の中に一戸建て住宅やマンション等の不動産があるときは、法務局の登記情報を確認することが重要です。
登記情報は、法務局の窓口で交付される登記事項証明書(全部事項証明書)やオンライン登記情報提供サービスにより確認することができます。
法務局では、土地については地番、建物については所在(地番)と家屋番号で登記情報を管理していますので、もし、不動産の住所しかわからず、地番が不明なときは、事前に法務局の窓口または電話で地番の確認(照会)をしてもらうと間違いを防ぐことができます。
特に、住居表示実施地域(○丁目○番○号)の不動産については、住所と不動産の地番が相違していることがほとんどですので、地番の確認(照会)を必ずしましょう。
上記の方法により、取得した登記の情報の取扱いについては、特に注意すべき点があります。
それは、法務局から提供される登記情報は、あくまで、こちらが指定した地番の不動産に関するもののみで、遺言や遺産分割の対象となるすべての不動産を網羅しているとは限らないということです。
法務局のシステム上、地番を指定せずに、遺言者や被相続人が所有するすべての不動産を一括して請求することができません。つまり、全部とれたかどうかについては、登記情報を請求する方の責任となります。
例えば、一戸建ての場合、土地は1筆であると思っていたら、実は2筆であったり、前面の道路が隣地所有者との共有名義であったりすることは珍しくありません。
大型の団地では、稀に、集会所を数十世帯で共有しているケースもあります。
マンションの場合も、駐車場や倉庫等の共有名義の建物が別棟として登記されていることがあります。
また、現存する建物の登記情報を取得したつもりが、内容をよく見てみると、取り壊したはずの古い建物であったり、現存する建物がそもそも未登記であったりすることもあります。
このような共有名義の道路や建物の登記情報を十分に把握せずに、対象不動産の取りこぼしや取り違いをしてしまうと、後日、余分な手間と費用がかかってしまうばかりか、相続人間でのトラブルに発展する可能性もありますので、できる限り調査をすることが肝心です。
調査方法については様々ですが、代表的なものをご紹介します。
1.固定資産税納付通知書に綴られている(土地・建物)課税明細書の記載確認
2.固定資産名寄帳(所有不動産の一覧表)の記載確認
※不動産所在地を管轄する市区町村の固定資産税課(税務課)で取得できます。
3.権利証とその附属書類の調査
4.法務局発行の図面による調査
※公図や測量図を基に接続道路等の地番を調査し、登記情報を確認します。
5.対象不動産の登記情報の記載内容に基づく調査
※抵当権の共同担保目録や分筆登記等に関する不動産の登記情報を確認します。
なお、令和3年不動産登記法の改正により「所有不動産記録証明制度」が創設されました。
この「所有不動産記録証明制度」では、自治体毎に作成される固定資産名寄帳と違って国内に保有する全ての不動産の情報が一覧で取得できるため、相続人が不動産を調査する手間を軽減できることが期待されています。
現在はまだ利用できませんが、2026年(令和8年)4月までには利用開始が決まっています。
何かと便利な制度ですが、所有者の氏名・住所が正しく登記されていない不動産は検索に引っ掛からないと考えられます。そのため、婚姻による氏の変更や転居による住所変更などの登記が未了の方は、今のうちに正しい内容に変更登記しておくことが大事な生前対策の1つになりそうです。
このような登記情報の調査は面倒と思われるかもしれませんが、遺言書の作成や遺産分割協議に際しては、やはり、念のための確認が大切です。
福岡相続サポートセンターでは、遺言、相続、不動産および税金に詳しい専門家がチームを組んで対応しておりますので、不動産の調査や登記情報の確認につき、相談頂けると安心です。