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コインパーキングと個人事業税

2021.09.20

こんにちは、税理士の太田圭子です。さて今回のテーマは個人事業税です。

今年の3月にコインパーキング事業者に土地を貸している不動産オーナーに対する個人事業税の課税が取り消しとなる判決が東京地裁で下されました。

なぜ課税が取り消されたのか?それは個人事業税の独特な課税方法に理由があります。今回は不動産オーナーが知っておきたい個人事業税の仕組みについて解説します。

 

1. 個人事業税は自動的に課税される。

個人事業税は年の中途で事業を廃止するなど、特別な場合を除き、所得税の確定申告を提出することにより、自治体が税金を計算して、納税者に通知する方式で課税されます。 いわば自動的に課税される税金です。「仕組みは良く分からないけど納付書が送られてくるから払っている。」という方も多いのではないでしょうか?

 

2. 個人事業税はすべての個人事業者に課税されるわけではない。

個人事業税は課税対象について、下記のようなルールがあります。

         ①年間の事業所得が290万円以下の人などは課税されない。 
    ここではざっくりした説明にとどめますが、青色申告特別控除前の所得が290万円以下
            の人は個人事業税がかかりません。そのほか社会保険診療報酬については非課税など
            独特なルールがあります。

   ②個人事業税が課税される事業の種類は70業種に限定されている。
    個人事業税はあらかじめ70業種の対象事業が定められており、それ以外の業種について
           は課税されません。例えば、プロスポーツ選手や画家などは対象業種に入っていないので
           本業でどんなに稼いでも個人事業税は課税されません。

 

3. 不動産賃貸は課税対象業種?
それでは不動産賃貸はどうでしょうか?確かに課税対象の70業種の中に「不動産賃貸業」と「駐車場業」があります。ということはすべての不動産賃貸が「不動産賃貸業」か「駐車場業」に該当するのでしょうか?
まさにここが、東京地裁が課税を取り消した判断の要になります。

 

4.  コインパーキング事業者に土地を貸したら「駐車場業」?
地方税法では、「駐車場業」とは何かという明確な定義が無く、各自治体が総務省からの技術的助言を軸に課税判断の基準を定めています。東京都はコインパーキング事業者に土地を貸している場合でも駐車スペースが10台以上あれば「駐車場業」と判断という基準を設けていました。
 
ちなみに私の住む福岡県でも、県のHPに公開されている「駐車場業」の判断基準は以下のようになっています。
 ・青空駐車場等→収容可能台数10台以上
 ・屋根付きまたは立体駐車場→収容可能台数にかかわらず課税対象

この基準に従えば、東京都と同様にコインパーキング事業者へ土地を貸しているだけでも10台以上の収容スペースがあると「駐車場業」として課税対象とされている可能性があります。
 

5. 東京地裁の判断
東京地裁は、自治体の判断基準には縛られず、過去の最高裁判決や駐車場法をもとに「駐車場業」とは何かを判断していきました。その結果、コインパーキング事業者に単 
に土地を貸しているだけならば、それは「駐車場業」にはあたらないという結論に至りました。
東京地裁の判断を要約すると、以下のようになります。
「事業とは事業者自身がリスクを取って経営判断して行うものであり、駐車場経営について自身で初期投資や集客努力や管理をすることなく、単に定額でコインパーキング事業者に土地を賃貸している行為は「駐車場業」とはいえず、従って個人事業税の課税対象業種にあたらない。」
 


この判決は今後の課税判断に影響を及ぼすことになるでしょう。東京都はこの判決を不服として控訴していますので、今後の動きにも注目です。
 

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筆者紹介

太田 圭子
税理士法人田﨑・太田事務所
税理士

大事な家族を亡くしてから10カ月という期間で申告しなければならない相続税。改正により今後相続税の申告をしなければならない人は増える見込みです。相続税は生前の対策、遺産分割の方法、そして財産の評価方法によって大きく税金が変わってきます。そして相続は相続税だけではなく、財産を相続した人のその後の所得税や消費税、そして無くなった方が法人経営者だった場合などには法人税にも大きく影響を及ぼします。専門家として相続にまつわる税金の悩みを解決するのが私の仕事です。不安を感じている方からお話を聞いて最善の解決策を御提案できれば幸いです。メールマガジンではできるだけ専門用語を使わずわかりやすくて身近な税に関する情報を記事にしていこうと思います。

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