来年度からスタートする証券の優遇税制、NISA(少額投資非課税制度)への関心が高まってきています。また、昨秋からの株価上昇で高まった日本株への関心は、2020年の東京オリンピック開催決定を受けて、更に世界中の投資家から注目の的となっているようです。
さて、このNISA(ニーサ)。少し前にもお伝えさせて頂きましたが、個人投資家の中長期にわたる運用を応援する制度となっており、NISAにおける「非課税の投資枠」は、1年ごとに100万円を上限とし、それぞれの有効期間は5年間となっています。
1年目は100万円、2年目も100万円(合計200万円)・・・
となり、5年目には最大500万円が非課税の投資枠となります。
また、1人につき最大500万円ということなので、ご家族がいれば、その人数分だけ非課税の投資枠が増えることになります。配偶者はもちろん、子や孫も各々非課税枠を利用することができるのです。
家族皆に現金を贈与して、全員で非課税枠を使いましょう!
しかし、ここでの注意点は「贈与税」です。
子や孫にお小遣い程度のお金を渡すのとは違い、まとまった金額を贈ると課税対象となってしまいます。
ですが、ご存知のように贈与税には非課税枠(受贈者1人あたり年間110万円までが非課税)があります。
つまり1年ごとに100万円を投資金額の上限とするNISAは、生前贈与の非課税枠に収まっているので、生前贈与とNISAは相性が良く、NISAによる子供や孫名義の積み立ては、将来の相続税対策にもなるわけです。
・NISA口座の開設は、開設年の1月1日現在で20歳以上の方が対象です。
ただし、いくらNISA口座の名義が子や孫になっていたとしても、実質的にこれが親の財産であると税務署から認定されてしまうと相続税の課税財産に取り込まれてしまいます。そのためにも、親から子への現金贈与に際しては、贈与契約書を作る、金融機関口座は子や孫が管理する(通帳、印鑑等の保管を含む)等、しっかりと贈与の証拠を残しておくことが必要です。
がしかし、このNISAには少し融通の利かない点もあります。
- すべての金融機関を通して、おひとり様1口座に限り開設可能。
- NISA口座開設後4年間、他の金融機関への変更不可。
- 非課税枠を一度使い切ってしまうと、売却しても非課税枠は復活できない。
- 5年の運用期間が終わった時点で値上がりした分は新たな枠に移せず、課税口座に移すか売るしかない。値下がりしていた場合、課税口座における取得価格はそのときの価格となるため、その後値上がりしたら、課税対象となってしまう。
また、普通分配金にかかる税金は非課税メリットとなりますが、元本を取り崩して支払われる特別分配金(元本払戻金)はもともと非課税であるため、分配金自体が一部を売却とみなされ、非課税枠が減ってしまうのです。意に反して損失が発生しても一般口座及び特定口座との損益通算はできません。
つまり、収益をあげなければ何のメリットもないのです。
生前贈与は、将来負担すべき相続税を抑える目的のために利用されるもの。
いつかの時点で課税されてしまっては、それこそ本末転倒です。
となると、値上がりしたら運用期間中に売却することが一番シンプルであるといえます。
NISAの仕組みに惑わされず、慌てずじっくり検討してからでも遅くはありませんので、
許容できるリスクにあった商品を選んで上手に活用して頂きたいと思います。
(例)贈与財産の価額の合計が500万円の場合
●基礎控除後の課税価格 500万円-110万円=390万円
●贈与税額の計算 (390万円×20%)-25万円=53万円